バンクーバー<禁酒時代とチャイナタウンをめぐる>ツアーに参加
海外旅行の楽しみの一つに、現地でのアクティビティが挙げられます。
各地のランドマークを訪れたり、体験施設でその国ならではの製作や観覧を楽しんだり。
その際、我が家が避けては通れない選択肢。
それは日本語可または英語のみ、という言語の問題。
アクティビティの内容により、手順や訪問場所が分かりにくいものは日本語可ツアーが安心。一方、英語のみであっても参加者の多くが各国からのゲストであればゆっくり解説してくれますので、大きな問題はないでしょう。
ただし、それらはあくまで世界各地から来たお客様向けツアー。
よーく探すと、比較的近隣諸国の人向け、もしくは英語が堪能な人向けの深い内容を持ったツアーが存在します。
バンクーバーには、カナダの禁酒時代からチャイナタウンの歴史まで、隠されたバンクーバーの暗黒の歴史を2時間歩きっぱなし、演技力満点のガイドさん兼ストーリーテラーから発せられるおびただしい情報量を含む英語を浴びっぱなしというツアーが存在します。
興味がありましたら、どうぞお読み下さいませ。
Each LISTs
Forbidden Vancouver Walking Tour へ行く前にすることリスト
- 必ず1人は英語が堪能な人に参加してもらう
- 割引になるバウチャー=クーポンを探す
- 各オンラインサイトから日時を決定し申し込む
- 集合場所、解散場所を確認し、移動方法を調べておく
- 短い自己紹介を用意する
- インスタやツイッターのアカウントを作っておく
- ツアーに参加する日は体力を温存しておく
Forbidden Vancouver Walking Tourに参加した時にすることリスト
- 勇気を持って自己紹介
- 英語を聞く姿勢はとにかくリラックス
- わからないところは雰囲気とフィーリングで乗り切る
- 歴史上の人の名前に翻弄されない
- ストーリーテラーであるガイドさん自体を楽しむ
- 案内される建物を楽しむ
- 中盤〜後半にかけて耳が英語を拒否し出しても、ひたすら音楽のように聴き続ける
- ジャンキーや薬中、不穏な人物が現れたらガイドさんの指示に従い穏便に行動
- 解散後の余韻を存分に楽しむこと
Explanation for each LISTs
Forbidden Vancouver Walking Tour へ行く前にすることリストの解説
参加する人数によりますが、英語が得意な人に1人いてもらうと、ツアーが楽しくなります。
もしくは、海外に場慣れしている人。
このツアーは10人前後のグループで移動しながら行われるものです。ごくたまに日本の方もいらっしゃるようですが、大抵は自分たち以外はすべて英語ネイティブの人、もしくは諸外国の方々。
交わされる会話のスピードはもちろんのこと、難しい歴史用語など、これ何だろう?と思う瞬間の目白押しです。そんな時、隣で「ここの建物は・・・なのかぁ」などとガイドさんの話をそっと呟いてくれる人がいると、ものすごく理解が深まります。そしてお互いに感想を述べることで7割程度の理解だった人も、英語を得意とする人が発するヒントから、続く次の場面で、よりガイドさんの話を聞き取れるようになっていきます。
また、場慣れしている人だと、どこを見学に行っても臆することなくのびのびと振る舞ってくれます。そうすると自分も心底楽しもうという前向きな気持ちになり、引っ込み思案な日本人気質が弱まるのです。
間違っても、英語が得意な人をただの通訳さんとして参加してもらうことや場慣れしている人を先頭に、などということを勧めているのではありません。
<ハードルが著しく高いツアーには底力が必要である>ということを意味しています。
よって、上記の参加して欲しい人に自らがなれることが一番良いのですが・・・。
対象ツアーには、割引になるバウチャー=クーポンが多種存在します。
数種の割引クーポンが一冊のブックになっているバンクーバーシティパスポートや、空港・観光案内所で配られるパンフレットなどで見つけられます。
バンクーバーの現地ツアーを扱うオンライン予約サイトにおいても、割引で発売されることがありますので、購入の際にはこれらをチェックし、お得に予約しましょう。
ツアーは大聖堂広場から始まり、ガスタウンで解散です。
夕方からのツアーになるため、バスやメトロは本数が少なくなっているかもしれません。宿泊場所や拠点からの移動方法をあらかじめ調べておくことをお勧めします。
ツアーの集合場所では、ガイドさんと参加者の皆で自己紹介タイム!があります。英語の短い自己紹介を用意しておくと慌てません。「日本から来たよ、今日は頑張って歩くよ!」くらいで構いません。
ツアー参加中はきっとたくさん写真を撮ります。普段は見かけないような、不思議で趣のある通りや建物を訪れるからです。
写真を投稿できるSNSアカウントがあると楽しいと思います。
ガイドさんもノリノリでポーズを撮ってくれます。
なぜなら、ガイドさんの立ち位置は18世紀のバンクーバーからタイムスリップしてきた人!だからです。夕暮れの街並みを背に、最高の被写体となってくれます。
体力に自信のある方は、リスト7は気にしなくて良いです。
しかし、お子様連れや普段2時間も歩かないな、という方は、参加当日はお昼間の予定を詰めすぎないようにして下さい。
ツアー途中はお手洗い休憩しかありません。
それ以外は歩きっぱなしの立ちっぱなしです。そしてバンクーバーの人は歩くのが速い。
加えて、英語+歴史を理解しようと頭はフル回転。
心身ともに疲れ果てる可能性がありますので、ゆとりのあるスケジュールを組む方が良いでしょう。
Forbidden Vancouver Walking Tourに参加した時にすることリストの解説
さぁ、いよいよツアーの開始です。
担当のガイドさんが参加者の確認を行ったのちに、輪になり自己紹介タイム。
すっかりストーリーテラーと化したガイドさんに続いて、各地域からの参加者がえへへ、と話出します。
うわー、緊張するわーと思いますが、勇気を持って話して下さい。
見るからにアジア人ですし、移民国家のカナダです。少々のアクセントや発音の違いなど気にしないで。ツアーを楽しみにしていたよ!今日は嬉しいよ!という気持ちで話して下さい。
みんなワクワクしているので必ず気持ちは伝わります。
ガイドさんの英語は、米語に比べると非常に聞き取りやすい方だと私は感じました。
イギリス領であったことも関係しているのでしょうか。ハキハキした感じ。
それでも、洪水のように英語の音と情報が入ってきますので、出来るだけリラックスして聞きましょう。全部聞き取ってやるぜ、という態度では疲れます。たぶん、あれだけの情報量だと言語が何であれ疲れてしまう。
周囲の景色や建物、解説に出てくる資料・写真を頼りに「ふーん」という感じで聞くのが2時間乗り切るコツです。
そこまでしても、やはり、ちんぷんかんぷんになることはあります。
そんな時は、雰囲気とフィーリングで乗り切って下さい。
知っている単語を一つ一つ拾うより、全体の雰囲気でなんとなくこんなことかなーと。
いい加減なアドバイスになりますが、わかる部分が出てくるまで流すことも大切です。
後から理解出来ることもあります。
ガイドさんの身振り手振りを含めて全体を聞くようにすると、さっきのわからなかった言葉はこういうことか!と、気がつくことが出来るでしょう。
ガイドさんが肩からかけている大きいバッグ、その中には資料や写真がたくさん入っています。これら資料は理解への大きなヒントとなりますので、遠慮せずに前へ出て良ーく見ましょう。政治家や事件の内容を記した当時の新聞などはおおいに参考になります。
ガイドさんはそれぞれの場所や歴史上の事件の雰囲気を纏い、とても上手にお話しされます。
時に歌い、踊り、暗い場面では静かに解説。
まるでショーを見ているようです。人1人を見続けていて飽きることがない。
ツアーで案内される建物は、通常のバンクーバー旅行ではなかなか訪れない場所が多く、興味深いものばかりです。
例えば、禁酒時代に隠れてお酒が提供されていたサロンがあった裏通り。
日が暮れてからは行きづらいチャイナタウン。
歴史上は有名であっても、現在は忘れられている建物。
方や、現在、世界で一番薄い建物として登録されているものなど。
普段訪れないところに踏み込んだという経験に加えて、その建物に様々な歴史があったことを知ると、バンクーバーという街を美しいだけではない視点で見るようになります。
知識と経験値が驚くほど上がることでしょう。
ツアー後半に入ると、あたりは夕闇に包まれ、より一層良い雰囲気になってきます。
そしてその頃には、耳が英語を聞くことを拒否しだす・・・かもしれません。
海外旅行に行くと、出発して数日間は、頑張って英語を話すぞー、聞くぞーと前向きな姿勢を保てるのですが、1週間ほどすると急に英語への積極性が低下することがあります。
この現象が2時間のツアー中に発生する恐れが多分にあるのです。それだけ、大量の情報がガイドさんや周囲から発せられる。
英語が音にしか感じられなくなったときは、もう、仕方ないです。
音楽として聞きましょう。
周りの電灯が素敵な夜を演出し、そこに流れる音楽だと思えば脳は喜んで聞き続けるでしょう。そのうち、ガイドさんも歌い出します。
音楽になると、自分の好きな部分や聞き取れて理解出来る部分が際立つこともあります。その瞬間にもう一度頑張ってみようという気持ちが生まれるはず。
ゆるい感じの英語 on/off ボタンを自分に作ると良いです。
ツアー中は、少々治安の悪い地域へ入りこむことがあります。
普段のバンクーバーのダウンタウン自体にもホームレスや謎の人物は歩いています。さっさと移動している分には絡まれることはありませんが、明らかにジャンキーや薬中っぽい人がいる場合は目を合わせず、ガイドさんの指示に従い場所を変えるなどして下さい。
私が参加した時も、ガイドさん自身がホームレスのおじいさんにすごく話しかけられていましたが、ツアーの雰囲気を壊すことなく上手に対処されていました。
ツアーは夜の美しいガスタウンで解散します。
その際、手作りの地図を頂けます。
そこには、ガイドさんたちお勧めの場所がたくさん書いてありますので、ぜひ立ち寄って、ツアーの感想を語り合うのも素敵でしょう。ツアーで解説された場所に由来するお店も載っていますから、より楽しい思い出になりますよ、きっと。
次の予約に使える割引コードもついていますね。
Our Personal Experiences
現在、このツアーはコロナのため一時的に開催を見合わされています。
私が参加したのは2019年8月でした。
バンクーバーに住む姉夫婦が私と小3の息子を珍しいツアーに、と誘ってくれたのです。
姉の旦那様はカナダ人。
しかし、このようなシティツアーは近すぎるがゆえ参加したことがないそうな。
我が家のお父さんはお仕事の都合で先に帰国していたため、総勢4名で参加しました。
内訳は、
ネイティブの旦那様
在カナダ10年超えの姉
最近オンラインで受けた無料のCNN英語検定は70/100くらいの私
英検3級の問題は解ける9歳(ただしリスニングは私より上)
大聖堂広場に集まった参加者は様々。
アメリカからのカップルや、のんびりとしたご夫婦。友達同士での旅行。
中学生と小学生の男の子を連れたカナダ東部から旅行中のご家族などが一緒でした。
ツアー内容は、禁酒時代のバンクーバーを中心に、違法とされたお酒をめぐる当時の人々の生活、解禁されていった道筋、今現在に残る法律、加えて戦争や人種間の争い、時代時代に起こった事件と主たる政治家や世に影響を与えたであろう人物について、実際の建物を巡り、解説されます。
なんの気無しに見ていた建物にまつわるお話しがたくさん聞けるので、バンクーバーについて前より詳しくなった気持ちになりました。えへん。
ツアーで巡った場所をいくつかご紹介。
禁酒時代に違法にお酒が振る舞われたサロンがあった裏通りです。
自分ではなかなか立ち止まらない、いや、立ち止まってはいけない場所です。
ここには秘密の会員制のサロンがあり、合言葉を言って出入りしていたそうな。ただし、良いお酒だけではなく、質の悪いお酒も多く出回り失明する人も少なくなかったと・・・。
そんなところから<blind pigs>という言葉が生まれました。
この裏通りは、この佇まいから映画の撮影に使われることがあるそうです。
要所要所で立ち止まり、皆で話を聞きます。
本来、立ち止まりにくい場所なので、ちょっとドキドキ。
夕暮れ時のチャイナタウンにも歩いていきます。
日本の中華街とは異なり、こちらの中華街はあまり治安が良くないと時折言われます。
お昼のランチは大丈夫な場所でも、夜は気をつけてね、などと。
しかし、ツアーだからどんどん皆で行くよ!
これ何?と思われるでしょう。
この地味な建物は世界で一番薄っぺらい建物です。灰色の部分が一つの建物。クリーム色の扉がある建物は別です。
大人が手を広げると余るほどの薄さです。
建物専用のツアーも開催されています。
15ドル・・・どれほどの知識欲が満たされるのか検討がつかない・・・。
有名な上海アリーも訪れました。
と、ここで、子供が怯えだす。
足元を見ると無残にぱらっぱらになった車のガラスのようなものが・・・。
事故の痕跡はないし、これは駐車中に割られたのだろう、まぁ強盗やな、と解説。
(うちの家では子供に、世の中のダークな部分をショックを受けない程度にきちんと話すことにしています)
さらに悪いことに、曲がり角の向こうで明らかにジャンキーっぽいおっさんが唸り声をあげています。ランニングと短パン、裸足。
これは、やばいな、と感じていたら、ガイドさんがそっと通りのすみにツアーグループを誘導しておっさんの視界から外れました。
おっさんの唸り声にはとくに触れずに。
そして、ささっと説明を済ませてさらに移動。
あぁ、上海アリー。
私の中では中華系移民が移り住んで、当時の街並みを模した趣ある場所という前印象が、ジャンキーあふれる緊張感ありありの地域に刷新されました。
もちろんそれだけではありませんが、初めて実地を訪れた時の印象は深く心に残るものです。
そして、ここで解説されたのは中華系移民と白人との争いの歴史。
相当な暴動があったことなどを知り、聞いていて少ししんどい気持ちになりました。
旅行中の一個人が歴史を聞くだけ、ととらえるならまだ耐えられるのですが、自分が属するアジア圏の人々が実際に体験し掻い潜ってきた物語として聞くと、キッツイ話やで、となる・・・。
素敵ーとか、いい感じーで終わらないこのツアー。
精神面も試されるようです。
ちなみにおっさんは、薬か酒の量が心身のリミットを越えたのか、我々が離れる時には車道と歩道にまたがって寝そべっており、近所のおじさんが引っ張って歩道にあげていました。
地図でいうと、この辺りで起こったこと。
それにしてもガイドさんは、相当量の知識を持って解説してくれます。
日本語で聞いたとしても知らないことばかりなので、頭の中がいっぱいいっぱいになりそう。
そこに、日本人の私たちにとって英語という大きな壁。
9歳の息子は前半こそ姉に通訳してもらい話を聞いていましたが、中華街を終えたところでキャパがオーバー。
頭から湯気が出てきそうな状態。
姉にしてもだいたいは理解出来ると言っていましたが、そんな彼女でもつまずくのが知らない人の名前。
建物や要所の名目?もしくは人の名前?
この答えを文脈や内容から瞬時に判断するのはなかなかたいへんらしく、政治家の話の時はガイドさんを見る目が非常に生暖かいものになっていました。
あ、いま、おねーちゃん、流して聞いてるね、という感じ。
私はというと、解らない部分は全部パス。
時折、息子に説明してくれる姉の話を聞いて、辻褄を合わせて行く感じで前半を乗り切る。
中盤にかかり、お酒の取り扱いに関する部分<病院が処方する薬としてならお酒が飲めるようになりました>という話は、唯一はっきりと理解することが出来ました。
処方箋とか診断とか、医療用語なら慣れており聞き取れるからです。
知っている分野の話が出たことで、なんとかリタイアせずに後半へ。
さぁ、2時間のウォーキングツアーはラストステージのガスタウンに到着です。
息子を見ると、美しい街の様子に、英語がまるで音楽のように寄り添い、とても気分が良さそうでした。英語理解のキャパは超えても、何時もガイドさんの最前列を陣取り、付いて回っていたのでした。
彼にとっては聞き取り、理解すべきものを越えて、以心伝心レベルになってゆくガイドさんの声。
ご覧下さい。
美しいでしょう。
最後にガイドさんの歌を聴き、拍手喝采でツアーは終了。
姉も私もふーーっと息をついている後ろで、姉の旦那様が
「いやー、ちょっと難しい歴史の話もあったね。こうしてバンクーバーの話を聞けて良いツアーだったよ、たくさん歩くから疲れるけど、参加してみるもんだね。」と。
あぁ、このツアーは、バンクーバー地元民がちょっと難しかったね、と言うくらいのツアーだったのか。
そういえば、家族連れの中・小学校くらいの男の子たちは途中から所在なさげだったな、きっとややこしい話が多くて退屈してたんだな、と振り返って気がつきました。
我々、無謀にも挑戦して、かなり頑張った方じゃないか。
最後まで諦めずに参加できて、偉かったな、と今までの現地ツアーでは得ることのない感情に包まれました。
うちの息子はというと、
「ラズキッズを1年分やった気分」とのこと。
(ラズキッズとは英語圏の小学校等でリーディング副教材として使われているオンライン型図書システム)
私も、本当にそんな気分でした。
帰りに旦那様がギャシージャック像を見て帰ろうと提案。
やっぱり夜は雰囲気がありますね。
実は私も息子も初めてみたのです、この像。
この人が初めてこの場に酒場を開いたことが由来になったガスタウン=ギャスタウン。
あ、きちんとツアーの主題の一つであるお酒のことに繋がった。
ほんとによく出来たツアーだ。